ラノベ評価


 タイトル
 〈卵王子〉カイルロッドの苦難

 作者名
 冴木忍

 イラスト
 田中久仁彦

 レーベル
 富士見ファンタジア文庫

 巻数
 全9巻

 発売年
 1992.7〜1995.2

 内容
 城塞都市ルナンの王子カイルロッドは、〈卵王子〉と呼ばれていた。
 彼は母親から、卵として生まれたのだ。
 そのショックで母親は彼を産んですぐ死亡してしまった。

 しかし、父王の愛情に包まれ、王子はいたって暢気な青年に育っていた。
 唯一の悩みは生まれのせいか、嫁の来手がないこと。
 今日も今日とて、やっと決まった婚約者に逃げられてしまった。
 うさばらしに城を脱け出し、街の酒場に行ったカイルロッドは、つい飲みすぎ、酔いつぶれてしまう。
 翌朝目覚めた時、彼の前には、異常な光景が広がっていた。ルナンの人々が石と化していたのだ。
 呪い? 誰が、なんのために…。
 謎を解明し、人々を救うため、カイルロッドの遥かなる旅が始まった。

 感想
 九十年代富士見ファンタジア文庫の代表作の一つ。
 他のレーベルに負け初め、迷走している今の富士見ファンタジア文庫からは想像もできないほどの傑作である。
 ……読み返したらそうでもないかもしれないけど。

 最近のライトノベルの主流である設定が細かい代わりに町スケール程度の小規模な作品とは反対に、荒削りながら世界レベルのスケールの大きい物語。
 そのスケールの大きさゆえに物語が収束する最終巻は涙なしに語れない。

 キャラクターごとのエピソードにはこだわらず、あくまで主人公のカイルロッドに焦点をあてて一貫して描かれているので、あまり脇道に逸れることもなく、一気に読み進めることができる。

 最近の消耗品がごとき萌え作品にはぜひ見習ってほしいものである。

 評価
 文章力 ★★★★★☆
 独創性 ★★☆☆☆☆
 スケール★★★★★☆
 イラスト ★★★★★★

 おすすめ度
 ★★★★★★


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